✅ この記事で解決できること
Meta広告の最強自動化メニュー「Advantage+ セールスキャンペーン(旧ASC)」の全体像を理解できます。名称変更の背景、マルチアドセット構造、既存顧客管理の変更点、オーディエンス設定、クリエイティブ戦略、技術基盤まで、”仕組み”と”考え方”をこの1記事で網羅的に解説します。
🎯 こんな人に最適です
- 「ASCが名前変わったらしいけど、何が変わったの?」と疑問を持っている方
- 既存顧客の予算上限機能が消えて困っている広告運用者
- Advantage+ オーディエンスの「提案」と「コントロール」の違いが分からない方
- 2026年の最新仕様を正しく理解した上でキャンペーンを運用したい方
- マルチアドセット構造をどう活用すればいいか知りたい方
🔧 必要な環境・前提
- Meta広告アカウントの管理者権限
- Metaピクセル(推奨:コンバージョンAPI併用)がWebサイトに設置済みであること
- 広告用の画像または動画素材が手元にあること
- 所要時間:約15分(通読)
1. まず結論:ASCはどう変わったのか?
2025〜2026年にかけて、Meta広告の自動化プロダクトに大きな構造変更があった。かつての「Advantage+ ショッピングキャンペーン(ASC)」は、適用範囲を拡大し「Advantage+ セールスキャンペーン」へと名称変更された。
これは単なるリネームではなく、MetaのAIエンジン「Andromeda」が、購買だけでなくリード獲得やアプリインストールまで包括的に処理できるレベルに進化したことを意味する。
| 変更点 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 「Advantage+ ショッピングキャンペーン」→「Advantage+ セールスキャンペーン」 |
| 対応する目標 | ①オンライン販売(Sales) ②リード獲得(Leads) ③アプリプロモーション(App Promotion) ※旧ASCは「販売」のみだったが、3つの目標に拡大された |
| デフォルト設定 | キャンペーン作成時、自動的にAdvantage+ セールスが開始される ※手動は「例外的な措置」という位置づけに変更 |
| 一言で言うと | 「ショッピング特化」→「あらゆるセールス活動を包括するAI統合プラットフォーム」へ進化 |

2. 旧ASC vs 新Advantage+ セールス:主要変更点の比較
旧仕様と新仕様の違いを一覧で把握する。特に「既存顧客予算上限の廃止」「マルチアドセット化」「広告数の上限変更」の3点は運用に直結する重要変更である。
| 比較項目 | 旧:ASC(ショッピング) | 新:Advantage+ セールス | 影響 |
|---|---|---|---|
| キャンペーン構造 | 1キャンペーン=1アドセット(事実上統合) | マルチアドセット構造(1キャンペーン内に複数アドセット可能) | 予算配分の柔軟性が大幅向上 |
| 既存顧客の制御 | 「既存顧客予算上限」機能あり | 機能廃止。除外or別アドセットで代替が必要 | 運用難易度が上昇 |
| 広告数の上限 | 1キャンペーンあたり最大150件 | 1アドセットあたり最大50件(複数アドセットで合計150件以上も可能) | 質の高いクリエイティブへの絞り込みが求められる |
| ターゲット設定 | 自動化(国設定のみ手動可) | Advantage+ オーディエンス導入。「コントロール(制限)」と「提案(ヒント)」に明確に分離 | AIへの指示方法が変化 |
| 予算最適化 | 自動(実質CBO) | キャンペーン予算(CBO) or アドセット予算の選択が可能 | 予算配分をAIに委ねるか人間が持つか選択可能に |

3. マルチアドセット構造とは?何ができるようになったのか
Advantage+ セールスキャンペーンの最大の構造変更は、「アドセット(広告セット)」の概念が復活し、同一キャンペーン内で複数のアドセットを運用できるようになったこと。
旧ASCの限界
旧ASCは「1キャンペーン=1アドセット」という構造だった。設定はシンプルだが、以下のような問題が発生していた。
| 課題 | 具体例 |
|---|---|
| 利益率の違いを管理できない | 高利益率の「アパレル」と低利益率の「雑貨」を同時に広告すると、AIは安価な雑貨の販売を優先してしまい、利益額の最大化が困難だった |
| キャンペーン分割が必要 | 対策としてキャンペーン自体を分けると、データが分散(Fragmentation)して学習効率が低下した |
マルチアドセットで可能になる3つの運用パターン
| 運用パターン | 内容 |
|---|---|
| ① 利益率ベースの分離 | 「高利益率商品」と「低利益率商品」を別アドセットに分離。キャンペーン予算(CBO)で全体を統合管理しつつ、アドセットごとの最小/最大支出制限で制御する。 |
| ② クリエイティブテスト | 「UGC風動画」のアドセットと「スタジオ撮影画像」のアドセットを同一キャンペーン内で比較。効果の高いフォーマットに予算が自動的に寄る。 |
| ③ スケールとテストの共存 | 実績ある「勝ちクリエイティブ」を集めたスケーリング用アドセットと、新しい仮説を検証するテスト用アドセットを同居させる。テストで成果が出たものを昇格させる。 |

4.「既存顧客予算上限」機能の廃止と3つの代替手段
2025年のアップデートで多くの運用者を動揺させたのが、「既存顧客予算上限(Existing Customer Budget Cap)」の完全撤廃である。
なぜ廃止されたのか
| 理由 | 詳細 |
|---|---|
| AI最適化への干渉排除 | 予算上限はAIの自由な配分を阻害する「ハード制約」であり、CPA(獲得単価)を悪化させる要因だった。Metaは「新規か既存か」より「総売上の最大化」を優先するシステム設計に舵を切った。 |
| シグナル精度の低下 | Cookie規制やITP(トラッキング防止機能)の影響で、「誰が既存顧客なのか」の判定精度が揺らいでおり、厳密なパーセンテージ制御の提供が技術的に困難になった。 |
代替案A:オーディエンスコントロールで完全除外する(最も確実)
旧機能で「予算上限0%」を設定していた場合に相当する方法。既存顧客には一切広告を表示しない。
| 手順 | 操作 |
|---|---|
| 1 | アドセット設定の「オーディエンスコントロール」セクションを開く |
| 2 | 「除外(Exclude)」項目を開き、カスタムオーディエンスを選択 |
| 3 | 事前作成済みの「全期間の購入者リスト」や「過去180日間のウェブサイト購入者」を指定 |
代替案B:アドセット分割で予算管理する(柔軟な配分が可能)
新規と既存に予算を配分したい場合(例:新規80%、既存20%)の方法。
| 手順 | 操作 |
|---|---|
| 1 | 同一キャンペーン内に2つのアドセットを作成: ・「アドセットA(新規向け)」 ・「アドセットB(既存向け)」 |
| 2 | アドセットA:オーディエンスコントロールで「既存顧客リスト」を除外設定 |
| 3 | アドセットB:「オリジナルのオーディエンスオプションを使用」を選択し、カスタムオーディエンスとして「既存顧客リスト」をターゲット(包含)設定 |
| 4 | CBO使用時は「広告セットの支出制限」を設定し、アドセットBの最大支出額を全予算の20%程度に制限する |
代替案C:クリエイティブで間接的にフィルタリングする
| 対象 | クリエイティブの方向性 |
|---|---|
| 新規顧客向け | 「ブランドストーリー」「問題提起」「初回限定オファー」 |
| 既存顧客向け | 「新商品発売」「ロイヤリティプログラム」「リピート割引」 |
同じアドセットに投入すると、AIはエンゲージメントの傾向から、自然とそれぞれのクリエイティブに反応する層へ配信を寄せる。ただし厳密な予算管理は不可能。あくまで補助的な手法として位置づける。

上記のどの方法でも、Metaが参照する「既存顧客リスト」が最新かつ正確であることが前提。ピクセルデータだけではブラウザ制限によりデータ保持期間が短い。KlaviyoやShopifyなどのCRMツールとAPI連携し、メールアドレス・電話番号ベースの顧客リストを毎日自動更新・同期する体制が2026年の運用では必須。
5. Advantage+ オーディエンス:「コントロール」と「提案」の違いを理解する
従来の「詳細ターゲット設定」は消滅し、「Advantage+ オーディエンス」が標準になった。ここで最も重要な概念は「コントロール(Controls)」と「提案(Suggestions)」の明確な区別である。
コントロール(Audience Controls)=絶対遵守のルール
AIに対するハードリミット(絶対遵守事項)として機能する。AIはどれだけ見込みの高いユーザーがいても、この条件を逸脱した配信は行わない。
| 設定項目 | 概要 | 推奨設定 |
|---|---|---|
| 地域(Locations) | 物理的な配信エリア | 配送可能エリアやサービス提供国を厳密に指定 |
| 最低年齢 | 配信対象の下限年齢 | 法的制限がある場合のみ設定(アルコール等)。通常は18歳。 ※上限設定は不可能 |
| 除外(Exclusions) | 配信しないカスタムオーディエンス | 既存顧客や直近コンバージョン済みユーザーの除外に使用 |
| 言語(Languages) | ユーザーの使用言語 | 特定言語のクリエイティブの場合のみ設定 |
提案(Audience Suggestions)=AIへのヒント(無視される場合あり)
「提案」に入力したデータ(年齢範囲、性別、詳細ターゲット、類似オーディエンス)は、AIにとってのソフトガイド(初期の手がかり)に過ぎない。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| AIの挙動 | 配信開始直後は「提案」された層から配信。良好ならその層に配信を継続するが、より安価で効果の高い層を見つけた場合、提案を無視してターゲットを拡大する |
| 具体例 | 「30代女性、ヨガに興味」と入力しても、40代男性やフィットネス無関心層にも配信される可能性がある。これはバグではなく仕様 |
| 類似オーディエンス | かつて強力だった類似オーディエンスも「提案」の一つとして処理される。1%や5%といった設定値には縛られない |
設定の深層にはまだこのリンクが残っている場合がある。これを使えば従来通りの厳格なターゲティングが可能だが、MetaはCPM高騰リスクと将来的な機能廃止リスクを警告している。特別な事情(法規制対応等)がない限り、Advantage+ オーディエンスの「提案」モデルに適応することが合理的。

6. クリエイティブ戦略:AIが最適化する時代の広告素材の作り方
ターゲット設定の自動化が進む中、広告パフォーマンスを左右する最大の変数は「クリエイティブ」になった。
Advantage+ クリエイティブの自動処理
「Advantage+ クリエイティブ」はデフォルトでオンになっており、アップロードした素材にAIが以下の処理を自動で行う。
| 処理 | 内容 |
|---|---|
| 標準的な拡張 | 明るさ、コントラスト、アスペクト比の微調整 |
| テキストの最適化 | 見出しとメインテキストの入れ替え、説明文の自動生成 |
| 音楽の追加 | 静止画に対するロイヤリティフリー音楽の自動付与 |
フォーマット別の注意事項
| フォーマット | ポイント |
|---|---|
| コレクション広告 | Advantage+内で縦型(9:16)動画を使用すると表示エラーの報告あり。メインアセットには正方形(1:1)の動画・画像を推奨 ※既知のバグの回避策 |
| カルーセル広告 | 各カードに異なるリンク先を設定するとCVR向上に寄与。1枚目に動画、2枚目以降に静止画の「混合フォーマット」が効果的 |
| カタログ広告(DPA) | eコマースの場合「Advantage+ カタログ広告」のトグルをオンにすると、ユーザーごとにパーソナライズされた商品推奨が可能 |
クリエイティブ運用の鉄則
| 項目 | 推奨値 |
|---|---|
| 投入数 | 1アドセットにつき6〜10件(最大50件) |
| 入れ替え頻度 | 21〜28日周期でのリフレッシュ推奨(広告疲れ防止) |
| 多様性 | 色違いだけのバリエーションではなく、「UGC」「静止画」「カタログ」「短尺動画」などフォーマットレベルで異なる素材を同時投入 |

実際の設定手順はこちら
ここまでの内容を理解した上で、実際にキャンペーンを作成・設定する場合は、以下の別記事で画面キャプチャ付きのステップバイステップ手順を確認できます。
👉 Advantage+ セールスキャンペーン 作成・設定マニュアルキャンペーン作成→目的選択→予算設定→オーディエンス→クリエイティブ入稿→公開まで、全7ステップで解説
7. 技術基盤:コンバージョンAPI(CAPI)の必須化
Advantage+の自動化エンジンを支えるのは「データ」である。以下の技術要件を満たしていないアカウントは、AIの性能を享受できない。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| コンバージョンAPI(CAPI) | サーバーサイドから直接Metaへデータを送信する仕組み。Cookie制限下で「真実のデータ」を担保するために必須 ※ブラウザのピクセル単体では計測精度が大幅に低下する |
| 接続方法の確認 | イベントマネージャで「接続方法」が「ブラウザ・サーバー」の両方になっているか |
| イベントマッチ品質 | 「高(Good/Great)」判定になっているか |
| 重複排除 | ピクセルとCAPIの両方からの同一イベント送信時に、event_id パラメータを用いて正しく重複排除されているか |
オポチュニティスコアの活用
Metaが新たに展開した0〜100のスコア指標。アカウント設定がMetaの推奨にどれだけ準拠しているかを示す。盲信する必要はないが、スコアが低い原因が「学習に必要なデータ不足」や「過度な制約」にある場合は、設定見直しのシグナルとして活用する。

8. まとめ:2026年の運用で勝敗を分ける3つの要素
「ASC」から「Advantage+ セールスキャンペーン」への移行は、Meta広告における「手動運用の時代」の終焉と、「AIディレクションの時代」の到来を意味する。
2026年に向けて、広告運用の勝敗を分ける要因は以下の3点に集約される。
| 順位 | 要素 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | データの質 | CAPIやCRM連携を通じた、正確かつ豊富なシグナルの供給 |
| 2 | クリエイティブの量と質 | AIがテストし学習するための、多様なフォーマットの素材を継続的に投入 |
| 3 | 戦略的構造設計 | マルチアドセット構造や除外設定を駆使し、AIの暴走を防ぎつつビジネス目標に合致させる設計 |
Advantage+ セールスキャンペーンの全体像は以上です。
仕組みを理解した上で、実際にキャンペーンを作成する場合は以下の設定マニュアルへ進んでください。
👉 次の手順:Advantage+ セールスキャンペーン 作成・設定マニュアル